抄録
本稿は、SDGsにおける多様な利害関係者間の連携に内在する差異の課題を論じる。SDGsの目標志向性や時間有限性は、文化・歴史に根ざした問題を周縁化し、差異から生じる対立や衝突を回避する傾向を生む。本稿は、この課題を克服し差異を学びの起点とするため、「共約不可能性」の概念に着目し、多文化子育てサロンでの相談支援事例を分析した。その結果、共約不可能性を認識することが、表面的な相互理解に陥る「共約幻想」からの脱却を促す契機となっていた。さらに、共約不可能性を起点とする学びの空間の要点として、①共通項を伴う差異の顕在化、②困難な事柄の表出を可能にする場の中立性、③共存・共在のための継続性の3点を提示した。これらの要件を満たす実践空間は、SDGsの枠組みでは捉えきれない日常的な交流や暗黙知を育みうる。共約不可能性への着目は、福祉教育・ボランティア学習の実践論の蓄積に寄与するであろうことが示唆された。