抄録
多様な主体の参画を促し社会に浸透したSDGsは、その枠組みが政治的妥協に基づいているため既存の権力構造や資本主義的価値観を揺るがすものにはなっておらず、学習やエンパワメントの視点が欠落していることが指摘されてきた。本稿はその限界を補う理論的枠組みとして、マルチチュード論を批判的に検討し、「郵便的マルチチュード」概念を参照する。現場の固定化された関係性を変容させる「誤配」やネットワークの「つなぎかえ」が新たな公共性を生む契機となる点に注目し、福祉教育・ボランティア学習における「ふくし」や「当事者性」概念を導入することで、多層的な学び合いの重要性を整理する。その上で、ESDプラットフォーム創成事業の事例を取り上げ、異なる立場の学習者が当事者性を交差させ活動を創出する様態を考察する。目標体系としてのSDGsが、当事者性に基づく実践の往還とつなぎかえによって「SDGs運動」として組みなおされる可能性を提示する。