抄録
本稿は、SDGs(持続可能な開発目標)、ESD(持続可能な開発のための教育)、福祉教育・ボランティア学習の共通テーゼの鍵となる概念としてスピリチュアリティに注目し、SDGs運動を組みなおす実践論の新たな地平を切り拓くことを目的とするものである。まず、SDGs運動の根源的な課題について考察し、スピリチュアリティとの関係を構築する基礎的枠組みを整理した。西洋近代主義とスピリチュアリティへのリスペクトに欠いた運動論の超克の必要性と期待されるスピリチュアルな学びのかたちを明らかにした。次に、ESDと福祉教育・ボランティア学習の融合的関係態としての「ふくし教育」のテーゼをまとめ、諸テーゼにスピリチュアリティがどのように定位されるべきかを論考した。とりわけ、当事者性学習論と〈いのちの持続性〉仮説をめぐるテーゼとスピリチュアリティの関係の観点から、スピリチュアルな学びを包摂したふくし教育の具体的な技法に関する研究が必要であることを説いた。