抄録
近年の遺伝子科学・工学の著しい発展は、従来から実施されてきた動物実験の概念を拡大・統合させる契機となっている。しかし、現在、大学等の研究機関に設置されている動物実験施設及び遺伝子実験施設で実施される実験に関しては、動物実験および遺伝子実験として別個に捉えられており、実験規則についてもそれぞれ独立に制定されている。本論文では、「価値構造」の観点を導入することで、生命科学の研究とそれを支えるべき制度の間の不調和を認識し、この不調和を克服するための新たな理念を構築する基礎作業として、伝統的な動物実験と遺伝子組み換え実験を統合する「先端的生命科学実験」という概念を提案したい。