生命倫理
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生命倫理における宗教的輸血拒否
中井 猛之仁科 健夫早崎 史朗
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2000 年 10 巻 1 号 p. 141-147

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抄録

1999年4月15日、医師国家試験の在り方を検討していた厚生省の改善検討委員会が最終報告をまとめた。これは、医の倫理や患者の人権の尊重などを重視した医療を行なえる能力を新人から培うという方向性を示したと言える。患者の立場に立ったインフォームド・コンセントを十分に行なえる医師を育てるためには、医学生の段階から倫理教育を施すことが必要であると考えられる。実際、各大学において医学生に対する倫理教育の取り組みが行なわれるようになってきた。そこで、一例として大阪医科大学で行なわれたエホバの証人の宗教的輸血拒否をケース・スタディーとしたスモールグループ学習を取り上げる。1.「エホバの証人について」、2.「エホバの証人の医療に関する倫理的立場」、3.「無断輸血裁判について」、4.「なぜ訴訟となったか」、5.「生命観や医の倫理にまで踏み込んだ論議がなされるべきである」、6.「真のインフォームド・コンセントの確立が必要」、7.「厚生省の指導」、8.「結論」からなる講義の内容を報告する。加えて幾つかの大学の医学部で行なったエホバの証人の代表者による倫理教育についても述べ、宗教的輸血拒否を医学生への倫理教育に用いたことによる成果を紹介する。

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2000 日本生命倫理学会
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