生命倫理
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遺伝相談と生命倫理
木田 盈四郎
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1992 年 2 巻 1 号 p. 75-79

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抄録

最近の遺伝、遺伝相談の現状を紹介し、生命倫理との関係を論じた。生命倫理の立場では「生存権を持つヒトを人格と呼び、生存権の否定・蹂躙は成り立たない」と考えている。この人格概念には、先天異常疾患の患者を除外する規定はない。一方、最近の生命科学の研究結果をまとめると「異常は正常の変貌であり」「ヒト集団は、先天異常患者を一定の頻度で含んでいる」ことが分かった。わが国では胎児の生命は妊娠22週以後は優生保護法によって守られている。患者の生存権を認める立場から見れば、妊娠21週までの胎児の決定権は「人格」を持つ親にある。したがって親は、羊水検査を含めた胎児情報を知る権利がある。そこで、その権利を守るために社会は、検査設備を整え、親に知らせる義務があると考えた。

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1992 日本生命倫理学会
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