生命倫理
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遷延性意識障害におけるケア提供と資源配分に関する倫理的諸問題 : 日本に特異的な診断基準からの一考察
戸田 聡一郎
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2011 年 21 巻 1 号 p. 4-11

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抄録

本稿では、日本に特異的な植物状態の診断基準(遷延性意識障害)を手がかりとして、その診断基準が世界的な臨床実践にいかに寄与できるかを考察する。日本独自の遷延性意識障害の枠組みに立てば、欧米の基準で無視されがちな、意識の有無が疑われる患者に対しても均一なケアを提供し、いまだその病態の本性に謎の多い最小意識状態(MCS)の疫学的データ収集に貢献できる可能性がある。しかしながら、実際の日本の臨床の体制は、そのような強みを生かせるものではない。加えて、理想的なケア体制を構築するためには、資源配分に関する深刻な問題を解決しなければならない。本稿は具体的かつ現実的なケア体制を考える際に、考察の前提となるべき論点を取り上げる。すなわち、(1)「植物状態」なる用語が喚起する固定化されたイメージの改訂、および(2)理想的なケア提供に向けて考慮すべき「正義」や「意識」といった諸概念の考察、である。

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2011 日本生命倫理学会
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