生命倫理
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難病支援の理念について : 経済効率からの再検討
徳永 純西澤 正豊
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2011 年 21 巻 1 号 p. 103-110

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抄録
難病支援の理念が問われている。難病患者の増加、公的支援の不足と財源難などに直面し、難病支援制度の見直しが喫緊の課題になっている。論点は端的には「限られた資源を少数に集中的に配分することの是非」という、生命倫理学分野でしばしば議論される資源配分論に集約される。我々は経済効率の視点からこの問題を再考する。まず難病はだれもが共通に抱えるリスクとなった現状を確認する。次に制度の歴史を振り返り、支援が初期からの恩恵性を超えて理解されていないこと、家族介護がいまだに公的支出の調整弁とみなされていることから、このままでは削減圧力にさらされやすく支援の拡充が困難なことを示す。そのうえで、保険の原理から考察すれば、難病支援はリスク対応の側面を持ち、理論的には難病支援の拡充が経済効率を改善させる性格があることを確認する。これらの議論より、経済効率を理由に難病支援は抑制できないことを示し、恩恵性を超えた理念の再構築が必要だと主張する。
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2011 日本生命倫理学会
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