生命倫理
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子どもの同意能力評価をめぐる倫理的問題と医療専門職の役割 : イギリスのGillick Competenceの議論を手がかりとして
福田 八寿絵
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2012 年 22 巻 1 号 p. 67-74

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抄録

治療行為や医学研究に際し、その対象者の同意が治療や研究の正当性の要件となっている。しかし子どもが対象者となる場合には、親権者を対象としたインフォームドコンセントのみで治療や研究がなされることが少なくなかった。国連こどもの権利条約発効以来、医療行為に関しても子どもの意思表明権などを認めることが世界的潮流となってきている。その先例としてイギリスには、親権者の同意なしで子どもが医療の意思決定を行うことが可能となる"Gillick rule"が存在する。本稿は、このGillick Competenceをめぐる議論を、特に治療行為に焦点を当て、子どもの意思決定に関わる医療者の役割と課題を明らかにすることを目的とする。治療行為における子どもの権利の法的枠組みとGillick Competenceとは何か、判例をもとに"Gillick rule"の問題点を検討し、利害関係者の役割とその克服すべき課題について考察する。医療チームは、子どもの生活環境への影響に鑑みて同意能力を評価し、子どもとの信頼関係を築き、子どもの秘匿性、プライバシー権にも配慮することが求められる。意思決定への参加を促し、医療専門職、子ども、家族との間で情報の共有化を図ることが医療専門職の責務である。

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2012 日本生命倫理学会
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