生命倫理
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英国の終末期医療における意思能力法2005の現状と課題 : 任意後見である永続的代理権と独立意思能力代弁人の意義をめぐって
田中 美穂児玉 聡
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2014 年 24 巻 1 号 p. 96-106

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抄録
高齢化に伴い、世界的にも認知症患者は増加傾向にある。世界各国は、能力の無い人の終末期医療の意思決定に関する諸問題の解決策を模索しているのが現状である。そうした試みの一つが、英国のMental Capacity Act (MCA,意思能力法)2005である。特徴的なのが、能力が無くなった場合に備えて代理人を設定する「永続的代理権」と、さまざまな権限を有した代弁人が、身寄りのない人の最善の利益に基づいて本人を代弁する「独立意思能力代弁人制度」である。本稿では、この2つの制度に焦点をあてて、MCA2005の実態を把握し、終末期医療に及ぼす影響を明らかにするため、国の公式文書や報告書、学術論文などを使って文献調査を行った。そのうえで、司法が抱える課題を指摘した。日本国内においても認知症の増加によって、能力が無い人の終末期医療の決定が大きな問題となるであろう。事前指示のみならず、代理決定も含めた行政ガイドライン、法的枠組みの必要性について議論する必要がある。
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2014 日本生命倫理学会
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