生命倫理
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報告論文
どのような人が理想の配偶子ドナーとなりうるか
-ニュージーランドと英国のドナーたちの経験から-
仙波 由加里
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2019 年 29 巻 1 号 p. 69-76

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抄録

 本研究の目的は、今後日本でさらに提供配偶子による生殖医療の需要が増えたときに、将来起こりうるリスクをできる限り回避するためには、どのような人がドナーとして望ましく、またこうした理想的なドナーを確保するためには、どのようなところでリクルート活動をするべきかを、ニュージーランドと英国のドナーたちの経験を参考に探ることである。 2019年現在、日本には第三者のかかわる生殖医療に関する法律や規定は存在しない。日本の今後の配偶子提供医療を考えると、法が出来た場合には、ドナーへの報酬の支払いを禁止する可能性が高く、また世界的な流れを受けて、自分の素性を明かしての提供が可能な人をドナーとして求めるようになると推察される。そこで提供精子や卵子での出生者にドナー情報の開示を法で保障しているニュージーランドと英国の配偶子ドナーに焦点をあて、配偶子提供の経験を持つ計5人に、2017年、半構造化インタビューを実施し、彼らの語りをもとにこれらを探った。理想的なドナーとして重要なのは、利他的な動機で、非匿名での提供が可能で、自分のパートナーや子どもに、提供の事実をオープンにできる人であり、さらに、不妊を経験するか、不妊に理解のある者が望ましい。こうしたドナーを確保することはたやすいことではないが、提供後のトラブルを避けるためにも重要といえる。日本でもドナー応募者は限定されるが、婚姻カップル、子どもを持つ親、不妊に悩む知り合いを持つ人、不妊治療を経験した人などの目につくクリニックや公共の掲示板、広告等を利用して、配偶子ドナーを募集することが理想のドナーの獲得につながるだろう。

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2019 日本生命倫理学会
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