2019 年 29 巻 1 号 p. 61-68
異種移植の課題として、「不自然さ」に対する懸念が指摘されることがあるが、不自然さは直ちに倫理的な判断を導くわけではなく、異種移植の倫理的な課題を取り上げた近年の研究において、不自然さへの懸念は十分には論じられていない。しかしながら、異種移植が社会に受容されるためには、不自然さへの懸念について掘り下げて論じる必要があるのではないか。そこで本稿では、不自然さとして言い表される漠然とした懸念に、理論的な輪郭を与える試みとして、ハーバーマスが用いている「人間の自然の技術化」という概念に着目したい。人間の自然の技術化という観点から、異種移植の倫理的な課題を検討することが本稿の目的である。