生命倫理
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巻頭言
依頼論文
  • 高島 響子, 浦出 美緒, 中田 亜希子, 中澤 栄輔, 伊吹 友秀
    原稿種別: 依頼論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 4-36
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     第30回日本生命倫理学会( 2018年12月、京都) にて著者らは、本学会の30年間の歩みを振り返る3 つのポスター展示—1 ) 30年間の国内の生命倫理に関わるトピックス、2 ) 30年間の日本生命倫理学会の活動の概要、3 ) 30年間の学会誌『生命倫理』の変遷—を行った。本稿はその発表内容を再編集しまとめたものである。30年の間に生命倫理に関わる多くの社会的な問題が生じ、さまざまな法や倫理指針が施行されてきた一方で、法規制の必要性が指摘されながら制定に至っていない領域もある。社会的な流れと呼応するように、本学会自体も様々な変化を経験し、また学会誌『生命倫理』においても時代ごとに多様なトピックスが取り上げら れてきた。本論文を通じてここまでの30年間の歩みに敬意を表すとともに、本学会員、ひいては本邦の生命倫理学にとって有用な資料の提供、並びに、これからの生命倫理学会の発展につながる契機となることを願う。

原著論文
  • -代理懐胎の倫理的問題を回避する解決策といえるか?-
    高島 響子
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     世界初の子宮移植による生児の誕生がスウェーデンで2014年に報告されて以来、子宮性不妊(UFI) の女性が自らの子を得る方法として、子宮移植の臨床応用の機運が高まり、日本国内でも臨床研究へ向けた準備が進行している。子宮移植は生殖補助医療を目的に臓器移植の手段を用いる新たな医療であり、両医療における既存の倫理的正当化や規制枠組みに当てはまらないことが考えられる。本稿は、子宮移植に伴う倫理的問題として、①臓器移植医療としての正当化及び実施可能性の検討、②生殖補助医療として他の代替手段である代理懐胎との比較検討、③生まれてくる子の福祉の検討を行ったうえで、国内で臨床応用する場合の問題点と将来的な代替手段として人工子宮の可能性を考察した。子宮移植の臨床応用前にこれらの問題について十分に検討し、UFI女性、子宮のドナー、生まれてくる子が、医学的のみならず社会的不利益を被らないようにしなければならない。

  • -美徳の追求-
    神德 和子
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     医療現場の看護師は、個人の徳(以下 、アレテー) をもっていることが重要である。しかし、医療安全を重視する医療・看護チームの一員として看護師個人が位置づけられることが、“患者にとって善いことを考え、実践する”ことを阻害しているかもしれない。看護実践に美徳の追求は不可欠であり、「患者にとって善いこと」をどの場面でも熟考し、実行することが重要である。透析中の安全確保のための抑制や転倒転落防止のための離床センサーという2 つの仮想事例を本稿では設定したが、安全を最優先することで奪われる患者の権利や、抑制される患者自身の本心から看護師は目を背けてはいけないことを指摘した。看護師個人のアレテーは、臨床現場で提供する看護実践を追求していく中でも発展していく。病院組織がそのことを認識し、看護師が看護の専門性を発揮できる職場環境を形成することが必要であろう。

報告論文
  • 森 禎徳
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     医療技術の進歩とともに、退院後も人工呼吸器や胃ろうなどの医療サポートを必要とする「医療的ケア児」の数は増大しているが、彼らの就学支援は一向に進んでいない。24時間体制の医療的ケアを必要とする以外には心身の障害がなく、日常生活に全く支障をきたさない例も多い医療的ケア児にとって、その心身の状態に応じた教育機会を奪われることは甚だしい権利の侵害である。 本稿では、医療的ケア児の就学を阻む要因を分析し、教育機関への看護師配置の遅れ以外にも、医療的ケア児を支援すべき法律が逆に彼らの受け入れを拒否する教育機関に免罪符を与えている現状に注目する。そして英米の「インクルーシブ教育」に対する数十年にわたる真摯な取り組みを参考にしながら、日本には法の成立をゴールと捉える傾向があり、法の不備を絶えず是正することで理想に近づく姿勢が欠如していることを指摘し、我が国が今後取るべき施策について提案を行う。

  • 吉田 修馬
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     異種移植の課題として、「不自然さ」に対する懸念が指摘されることがあるが、不自然さは直ちに倫理的な判断を導くわけではなく、異種移植の倫理的な課題を取り上げた近年の研究において、不自然さへの懸念は十分には論じられていない。しかしながら、異種移植が社会に受容されるためには、不自然さへの懸念について掘り下げて論じる必要があるのではないか。そこで本稿では、不自然さとして言い表される漠然とした懸念に、理論的な輪郭を与える試みとして、ハーバーマスが用いている「人間の自然の技術化」という概念に着目したい。人間の自然の技術化という観点から、異種移植の倫理的な課題を検討することが本稿の目的である。

  • -ニュージーランドと英国のドナーたちの経験から-
    仙波 由加里
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、今後日本でさらに提供配偶子による生殖医療の需要が増えたときに、将来起こりうるリスクをできる限り回避するためには、どのような人がドナーとして望ましく、またこうした理想的なドナーを確保するためには、どのようなところでリクルート活動をするべきかを、ニュージーランドと英国のドナーたちの経験を参考に探ることである。 2019年現在、日本には第三者のかかわる生殖医療に関する法律や規定は存在しない。日本の今後の配偶子提供医療を考えると、法が出来た場合には、ドナーへの報酬の支払いを禁止する可能性が高く、また世界的な流れを受けて、自分の素性を明かしての提供が可能な人をドナーとして求めるようになると推察される。そこで提供精子や卵子での出生者にドナー情報の開示を法で保障しているニュージーランドと英国の配偶子ドナーに焦点をあて、配偶子提供の経験を持つ計5人に、2017年、半構造化インタビューを実施し、彼らの語りをもとにこれらを探った。理想的なドナーとして重要なのは、利他的な動機で、非匿名での提供が可能で、自分のパートナーや子どもに、提供の事実をオープンにできる人であり、さらに、不妊を経験するか、不妊に理解のある者が望ましい。こうしたドナーを確保することはたやすいことではないが、提供後のトラブルを避けるためにも重要といえる。日本でもドナー応募者は限定されるが、婚姻カップル、子どもを持つ親、不妊に悩む知り合いを持つ人、不妊治療を経験した人などの目につくクリニックや公共の掲示板、広告等を利用して、配偶子ドナーを募集することが理想のドナーの獲得につながるだろう。

  • 徳永 純
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     多系統萎縮症患者の呼吸補助についての意思決定過程を巡る倫理問題を提起する。多系統萎縮症は根治療法のない難病であり、多彩な神経症状のため意思疎通が難しくなるうえ、突然死の主因となる呼吸障害も生じる。呼吸障害については、エビデンスは不十分ながら、気管切開下陽圧人工呼吸( TPPV) が比較的安定した長期生存を実現する可能性がある。だがTPPVを導入する患者はごく少数に限られる。客観的な生の質 (QOL) を低く見積もられてしまうために、人工呼吸器を着けない選択へと誘導されてきたからだと考えられる。本稿では患者3例と家族のインタビューにより、どのように誘導を逃れ、生存を選ぶ決定をしてきたかを明らかにする。進行期にあっても患者との継続的な関係を築くことによって、わずかな動作や表情から患者の意思をくみ取る「言語ゲーム」を成立させることが可能であり、患者本人の自律を尊重した決定を実現すべきである。

  • 松井 健志, 井上 悠輔, 楊河 宏章, 高野 忠夫
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     近年、臨床研究計画や研究内容に関連した倫理的問題への対応等について助言や推奨を与える研究倫理コンサルテーション・サービスの活動が広がりつつある。しかし、その活動が扱う臨床研究の内容やそれを取り巻く法・規制環境が高度化・複雑化する中で、それを担当する「研究倫理コンサルタント」には高度な専門的知識等が必要となってきているが、研究倫理コンサルタントに果たしてどのようなコンピテンシーが必要であるか、ということの検討はこれまでほとんどなされていない。診療上の倫理問題について当事者に助言を行う臨床倫理コンサルテーションでは、これに先行してその担い手である臨床倫理コンサルタントに必要なコンピテンシーについて検討されてきた。そこで本研究では、臨床倫理コンサルタントでのコア・コンピテンシー・モデルを参考に、研究倫理コンサルタントに必要なコア・コンピテンシーについて検討を行い、モデルの作成を試みたので報告する。

  • 中澤 慧
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     心肺蘇生時に患者の家族の立ち会いを許可する試みは、家族の要望に応じるかたちで1982年にアメリカで初めて実施された。立ち会いを経験した家族や医療者への意識調査をもとにして議論がかわされ、欧米では心肺蘇生時の立ち会いに関して家族に選択の機会を与えることがガイドラインで支持されるようになったが、家族の立ち会いを正当化する倫理的な根拠については十分に検討されてこなかった。本稿では、心肺蘇生を受けている患者が事前指示を残していない場合、家族の立ち会いをめぐって、代理意思決定の基準に依拠して議論することの是非について検討する。結論として、代理意思決定の基準ではなく、情報開示の基準に則って家族の立ち会いが議論されるのが妥当であることを論じる。立ち会いで家族が目の当たりにする患者の様子は、患者の病状に関する情報の一部であり、家族の求めがあれば、情報開示の一環として立ち会いは許可されるべきである。

  • 林 芳紀
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 103-111
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     近年、特に開発途上国の人々を対象とした医学研究の文脈で発生する倫理問題の一つとして、追加的ケアの問題が注目されている。この問題に関して現在最も有力な理論的枠組と目されているのはリチャードソンが提唱した部分委託モデルであるが、これに対してはその射程の限定が数多くの批判を招いている。そこで、本稿では、部分委託モデルの概要を確認した後、この射程の限定に対するディッカートとヴェンドラーによる批判と、その批判に対するリチャードソンの反論を検討し、部分委託モデルによる射程の限定は一種のジレンマに陥っていることを示す。次に、このジレンマを打開するための二つのアプローチを提示し、各々の問題点を浮き彫りにする。以上を通じて、最終的に、追加的ケアの責務の多様な可能的根拠の探索と、それらを総合した研究者の責務の全体像の描出が、追加的ケアの問題にとっての今後の課題として残されていることを示す。

  • -倫理審査の質向上を目的とした倫理審査委員の教育・研修を題材として-
    有澤 和代, 神里 彩子
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 112-120
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     平成27年4月、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が施行され、倫理審査委員には審査等に必要な知識を習得するための教育・研修を受講することが、倫理審査委員会設置者には倫理審査委員の教育・研修の受講を確保するために必要な措置を講じることが義務付けられた。同指針制定後、各教育・研修の実施率は大幅に向上したものと推測されるが、効果的な教育・研修を実施するためには、教育・研修が倫理審査委員や倫理審査委員会に対してどのような効果を及ぼしたのかを測定し、評価できる手法が不可欠である。 そこで、本稿では、HRD(人的資源開発) の教育評価手法として評価が高いカークパトリック( Donald L. Kirkpatrick) の4 段階評価モデルが倫理審査委員への教育・研修の評価にも応用可能であることを確かめた上で、4 段階評価モデルを適用し、評価指標を試行的に作成した。

  • -2つのジレンマ・メソッドの比較を通して-
    服部 健司
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 121-130
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     MCD( moral case deliberation) とは、目前の困難なケースをより深く理解し、倫理問題を解消する具体的な策をひねり出す目的で、トレーニングを受けたファシリテーターによる最小限の仕切りの下、多職種のヘルスケア専門職者たちが病棟内で反省的な対話を重ねる際の多段階式の諸方法の総称である。外部の専門家たちに特権的な立場を与えないという点で、MCDは臨床倫理コンサルテーションや臨床倫理委員会とは異なる。数ある流儀の中で最も影響力のあるものの一つであるジレンマ・メソッドは、アムステルダム自由大学医療センター(VUmc) メタメディカ講座によって2000年代後半に開発された。名が表す通り、ケースをその場に持ち込んだ人自身が経験したジレンマを明確化することをもってMCDの端緒とする。ジレンマを特定し明確化することで時としてMCDの進行がよりなめらかになりうるのは確かであるが、時として逆に困難になることもある。そのケースがはらむいくつもの倫理問題が一つのジレンマに還元されてしまうことにとまどう参加者は少なくない。もっともこれは文化の違いによるのかもしれない。本稿では、ジレンマ・メソッドの各ステップを吟味しながら、ジレンマという枠組を守る必要性が本当にあるのかどうかを検討する。そのために、 このジレンマ・メソッドの原型である、別のジレンマ・メソッドを参照する。それは2000年代初頭にジャック・フラステが作り上げたものである。フラステ版のジレンマ・メソッドもまたジレンマの明確化から開始するのではあるが、しかしジレンマという枠組の中で決着をつけようとするのでなく、むしろそこから解放されることが目指されている。これら二つのジレンマ・メソッドの比較考量を経て、結部ではMCDの参加者たちを二分法的な図式に縛り付けないような、ジレンマ・メソッドの縮約版を提示する。

  • -基礎的知識と倫理教育-
    二木 恵子
    原稿種別: 報告論文
    2019 年 29 巻 1 号 p. 131-140
    発行日: 2019/09/26
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー

     本稿は、自作した簡単で「わかりやすい排尿のしくみ」の教材模型が、介護福祉教育で活用されることを目指すものである。そして、介護学生が専門職として生活支援を倫理的な原則をもとに実践することを期待するものである。これは筆者が試用し、学生に興味・関心をもたせるよう教授した結果を検討し、さらに、本教材模型の精度を向上させるため、産学医工連携促進支援事業で公表し、企業の技術提供を得て製品化を行った。尿の流れがわかるように工夫し、講義を動画に撮り、振り返りと試作の検討に活用した。企業の製品化が近い試作の教材模型を試用し、模擬的に尿の流れを見せることで、腎・泌尿器系のわかりづらい臓器の機能が明確に関連づけられ、対象者の排泄に関する障害の根拠が理解できた。これにより、高い倫理性の保持の実現が求められる介護福祉教育への寄与が期待される。

第30回日本生命倫理学会年次大会プログラム
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編集後記
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