生命倫理
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生命医療倫理の研究者・実践者としてゲノム編集に思うこと
門岡 康弘
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2020 年 30 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

 昨年の第31回日本生命倫理学会年次大会では、内閣府共催企画となる市民公開講座「ヒト胚のゲノム編集技術をめぐる市民との対話」が開催された。筆者は専門家と市民の橋渡し役として、ゲノム編集の展開と関連する論点を三つに区分し意見を述べた。まず、個体が発生しない「基礎医学/前臨床研究」のフェーズでは主な当事者は研究関係者となる。健全かつ公正な研究の実施と編集の精度や安全性の解明と評価が主な課題となるだろう。その次の到来が予想される「臨床研究/臨床医療」のフェーズでは、ゲノム編集を受けたヒト胚は実際に生を享ける。われわれは被験者保護そして公正な医療の実現に努力すべきである。また、ヒト胚の道徳的地位ついて再考を求められるかもしれない。そして三番目は「医療をこえた利用」のフェーズである。多数のデザイナー・ベビーの誕生は人間関係、生き方や社会構造に大規模そして複雑に影響するだろう。編集技術の受容と普及のために、多領域が連帯して対処していく必要がある。

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2020 日本生命倫理学会
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