生命倫理
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ヒトゲノム編集のガバナンスと分野横断型協働の果たす役割
加藤 和人
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2020 年 30 巻 1 号 p. 4-14

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抄録

 遺伝子を簡便に効率よく改変できるゲノム編集は、基礎から応用まで医学・生命科学の基盤的技術となっている。ヒト胚にゲノム編集を施した基礎研究の論文が発表された2015年から、技術の人間への利用方法、特に世代を越えた遺伝子改変の是非が、世界中で議論になってきた。本稿では、この期間の出来事を多様なステークホルダーに注目して振り返り、見えてくる課題と今後への示唆を検討した。科学研究コミュニティはグローバルな議論の活性化に重要な役割を果たした一方で、中国の研究者によるゲノム編集を施した双子誕生のような非倫理的な行為の防止には、科学研究コミュニティの自主規制では限界があることが明らかになった。 今後は、医学や生命科学以外の専門家、市民、患者などを含む多様な分野の人々が参加し、分野横断的な世界規模の議論を行うことがこれまで以上に重要となる。生命倫理学やELSI研究の専門家は議論を活性化する役割を果たすことが期待される。

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2020 日本生命倫理学会
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