生命倫理
Online ISSN : 2189-695X
Print ISSN : 1343-4063
ISSN-L : 1343-4063
報告論文
無反応覚醒症候群をめぐる確率論的転回
-誤診率を手がかりとしたケアの方法論を出発点として-
戸田 聡一郎日笠 晴香
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 32 巻 1 号 p. 86-94

詳細
抄録

 かつて「植物状態」と呼ばれていた意識障害は、近年、その病態が含意するものの変遷により無反応覚醒症 候群( UWS) と呼ばれるようになった。しかし意識障害の診断基準や呼称の変遷、診断精度の向上にもかかわらず、その誤診率の高さは臨床において信用されるほど下がっていないとも指摘される。UWS患者にとって日常的なケアは重要であり、ケアの継続によってたとえわずかであっても意識の回復(発見) の可能性が担保される。しかし、誤診に基づいて適切なケアが行われない場合もあり得る。本稿では、意識障害の患者のケアにおいて、「確率論的転回」が求められることを主張する。そのために、診断された「無意識の状態」をどのように認識(前提)すべきかに関する確率論を用いた議論を行う。それにより、ケアの態度の前提となる事前条件を「彼/彼女はコミュニケーション障害に陥っているだけであり、意識的である可能性がある」とすることが実臨床においても、家族とのコミュニケーションにおいても有用性があることを示す。

著者関連情報
2022 日本生命倫理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top