2022 年 32 巻 1 号 p. 76-85
常染色体潜性遺伝(劣性遺伝) 病は、同じ遺伝子変異を持っている非発症の保因者同士が子どもをもうけた場合、4 分の1 の確率で子どもが重篤な症状を発症する。そのため、1970年代以降、欧米等では子どもの疾患 のリスクを事前に把握するために、特定の民族・地域集団に対する保因者検査が実施されてきた。近年では、遺伝子解析技術が高度化したことで、一般人口に対象を拡張した保因者検査が行われつつある。本稿ではこう した背景を踏まえて、(1) 保因者検査をめぐる歴史と国際的な動向の紹介、(2) 日米の方針の比較、(3) 先行研 究の論点整理を行う。その上で、一般人口向けの保因者検査が商業目的に限らず医学的理由等から導入され得 ることを指摘し、保因者検査のELSIについて日本でも議論を蓄積していく必要性があることを述べる。