動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
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離乳前の乳用子牛における消化器系および呼吸器系疾病の診断前の血液成分
新宮 裕子上田 宏一郎松井 義貴若槻 拓司堂腰 顕
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2024 年 60 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

本試験は、血液成分を用いて呼吸器および消化器系の疾病を早期発見するための基礎的知見を得るために、臨床診断前の血液成分を健康な子牛と比較した。試験は乳用雌牛の預託育成牧場で行い、哺育牛舎に滞在する離乳前のホルスタイン種雌牛を供試し、冬と春に週2回採血を行った。治療履歴を基に獣医師による診断前の3日間に採取した疾病牛の血液を、同じ採血日に同じ牛房にいて同日齢で採取した健康牛の血液とペアにして比較した。消化器系の疾病牛は10頭、呼吸器系の疾病牛は17頭であった。消化器系の疾病牛では、血清GGTPは健康牛よりも有意に高かった(P = 0.041)。呼吸器系の疾病牛では、血清Ca濃度およびアルブミン/グロブリン(A/G)比は、健康牛よりも有意に低かった(Ca; P = 0.013, A/G; P = 0.029)。ハプトグロビン濃度が50μg/ml以上の頭数は、消化器系の疾病牛では3頭、呼吸器系の疾病牛では6頭であった。冬の血清アルブミン(ALB)およびMg濃度は、春よりも有意に高かった(消化器系:ALB;P=0.003, Mg; P=0.002)(呼吸器系:ALB; P<0.001, Mg; P<0.001)。疾病の種類によって、疾病の初期段階で変化が生じる血液成分は異なることが示唆された。

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© 2024 動物の行動と管理学会
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