動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
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原著論文
  • 鈴木 結子, 伊澤 栄一
    2024 年 60 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    野生動物のヒトに対する警戒や恐怖の行動指標として飛翔開始距離(Flight initiation distance:FID)がある。FIDを指標とした動物のヒトに対する警戒は検討されているが、対象動物に対するヒトの行動とFIDを調べ、両者の関係を調べる試みはなされていない。本研究では、東京と札幌を調査地とし、野生ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)のヒトに対するFIDと、歩行者のハシブトガラスに対する振り向き行動を調査し、それぞれの行動を都市間で比較した。その結果、FIDは東京より札幌で小さく、歩行者がカラスに対して振り向く確率は東京より札幌で高かった。本研究は、都市に生息するハシブトガラスのFIDにおける都市間差を示す初の報告である。さらに、因果関係は不明であるが、ヒトのカラスに対する日常的な行動はFIDの地域差の要因になっている可能性がある。

  • 浅利 裕伸, 伊藤 鈴夏
    2024 年 60 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    カラス対策に用いられる複合音声はカラスの防除において高い効果が示されているが、家畜の中でもブタは刺激に敏感であるため、音声がブタに影響を与えるかもしれない。本研究では、音声防除による放牧ブタへの影響を明らかにするために、音声非供与期間(2021年7月26日~8月4日)と音声供与期間(9月22日~10月1日)での雄10個体の行動時間を比較した。音声供与によって休息行動、探査行動、摂食行動の各時間割合に大きな変化はみられなかった。また、音声供与による単発的な行動はみられなかった。そのため、カラス防除のための複合音声が放牧養豚のブタに与える影響は極めて小さいと考えられた。ただし、音声供与の開始日には探査行動時間の増加と休息行動時間の減少がみられたことから、音声はブタの警戒行動をもたらす可能性があるが、音声供与2日目には行動時間割合に変化がなかったため音声に対する慣れも生じていたかもしれない。

Short report
  • 新宮 裕子, 上田 宏一郎, 松井 義貴, 若槻 拓司, 堂腰 顕
    2024 年 60 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    本試験は、血液成分を用いて呼吸器および消化器系の疾病を早期発見するための基礎的知見を得るために、臨床診断前の血液成分を健康な子牛と比較した。試験は乳用雌牛の預託育成牧場で行い、哺育牛舎に滞在する離乳前のホルスタイン種雌牛を供試し、冬と春に週2回採血を行った。治療履歴を基に獣医師による診断前の3日間に採取した疾病牛の血液を、同じ採血日に同じ牛房にいて同日齢で採取した健康牛の血液とペアにして比較した。消化器系の疾病牛は10頭、呼吸器系の疾病牛は17頭であった。消化器系の疾病牛では、血清GGTPは健康牛よりも有意に高かった(P = 0.041)。呼吸器系の疾病牛では、血清Ca濃度およびアルブミン/グロブリン(A/G)比は、健康牛よりも有意に低かった(Ca; P = 0.013, A/G; P = 0.029)。ハプトグロビン濃度が50μg/ml以上の頭数は、消化器系の疾病牛では3頭、呼吸器系の疾病牛では6頭であった。冬の血清アルブミン(ALB)およびMg濃度は、春よりも有意に高かった(消化器系:ALB;P=0.003, Mg; P=0.002)(呼吸器系:ALB; P<0.001, Mg; P<0.001)。疾病の種類によって、疾病の初期段階で変化が生じる血液成分は異なることが示唆された。

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