2019 年 28 巻 1 号 p. 14-25
本研究で筆者は,ナラティヴ・セラピーにおける外在化と脱構築にあたっての留意点について,事例をもとに検討した。自責感に悩むうつ病の男性クライエントは当初,セラピストが外在化を試みた問題を切り離すことに難色を示した。「手を切れない」と言ってその問題と対抗することをためらったのである。しかしそこに持ち込まれた森田療法の,すっきりしない感覚を受け入れ,それを切り離すのではなく共存しようとするあり方は,脱構築と治療の進展を促した。また本研究はナラティヴ・セラピーを日本での臨床においてどう効果的なものにするか,という検討としても重要な意義をもつと考えられた。