ブリーフサイコセラピー研究
Online ISSN : 2432-9371
Print ISSN : 1880-5132
研究報告
DV被害女性のトラウマケアにブレインスポッティングを用いた事例—同居を継続するDV被害者の支援—
中野 葉子
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ジャーナル 認証あり

2024 年 32 巻 2 号 p. 53-63

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抄録

本研究では,トラウマケアにブレインスポッティング(BSP)を用いたDV被害女性の事例を報告した。ドロップアウトを避けるための配慮と,共感的な表現による心理教育をとおして,クライエント(Cl)に被害者としての当事者性が芽生え,BSPの導入に至った。6回のBSPセッションののち,DV場面を想起した際の恐怖と不快な身体感覚が消失し,「過去の出来事は『悪い思い出』のひとつ」という認識の変化があった。過去の成功体験を思い出すなかで,Clは自信と主体性を回復することができた。そこには,強い恐怖感から不動化し,トラウマ処理が停滞した場面でのセラピストの介入が寄与したと考えられる。BSPは,本事例のように同居を継続し,さまざまな制約があるなかで,「逃げない/逃げられない」DV被害者が自分のために意思決定していく力を引き出すトラウマケアのひとつとして期待できる。

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© 2023 日本ブリーフサイコセラピー学会
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