2010 年 6 巻 3 号 p. 55-62
今回の研究は,全身麻酔下で消化器系の手術を受けた高齢者のせん妄発症と睡眠実態の関連性を明確にすることを目的に取り組んだ.対象者には,手術前2日間と手術後1週間にわたり時計型の加速度計を装着してもらい活動量を計測するとともに睡眠実態調査を実施した.
結果,80歳代の患者4名のうち3名に術後せん妄の発症がみとめられた.また,せん妄の発症時期は手術当日~手術後4日目であった.活動量をもとに解析した睡眠評価では手術後の睡眠効率はせん妄発症当日に著しく低下していた.さらに,起床時の眠気は手術後1日目および手術後3日目に低下する傾向が強かったが,手術後7日目には改善する傾向が示された.しかし,入眠と睡眠維持は手術前より手術後に悪い傾向を示した.このことより,手術後早期の高齢者の睡眠の特徴は,寝つきが悪く,睡眠維持が困難になることが明らかになった.