抄録
現在の歯科医療は,来院者の継続受診を前提として成り立つ.主たる歯科疾患であるう蝕や歯周病は,慢性疾患であり生活習慣病である.また,不正咬合に大きな影響を与える態癖も生活習慣から導かれる.歯科治療に対しては,治療の過程や結果に対する来院者の理解と納得を獲得しなければ,治療やメンテナンスそのものが成り立たない側面がある.来院者の理解と納得を獲得するために,私たち歯科医療従事者は,一般の歯科治療テクニックと同様に,「心通い合うコミュニケーション」を構築するためのテクニックを習得する必要がある.しかしこれまで歯科臨床の場面で,来院者(患者)対応におけるコミュニケーションアプローチに関して考察している文献はほとんど認められない.そこで本稿では,ビジネスコーチングのエリアで活用されている「コミュニケーションスタイルによる分類:Communication Style Inventory」を導入し,来院者と「心通い合うコミュニケーション」を構築するアプローチ法について紹介し,症例を通じてその有効性について考える.