2012 年 32 巻 3 号 p. 293-301
卒後6 年の未熟な私は,臨床でのスキル(dentistry)に対する不安以上に,日々の診療の中で診査・診断について悩むことが多い.『病態』=『患者さん自身に今何が起こっているか』を把握せずに治療を開始すると,思いもよらぬ結果になることがある.そこで,『病態把握』と『口腔医学における病因論(stomatology)』を考慮し,診断に組み込むことが適確かつ包括的な治療計画へと結びつくのではないかと考える.本症例は,全身既往歴としてメニエール病をもつ患者であるが,規格化した診査項目に沿って診査・診断を行い,生活習慣癖指導と前歯部接触型スプリント(診査及び治療の目的)を2 週間使用.症状は軽減傾向を認めたが,治療経過としては再評価までとなっている.症例を通じて,私なりの見解を述べてみたいと思う.【顎咬合誌 32(3):293-301,2012】