2015 年 35 巻 3 号 p. 211-220
ケルバーによってコーヌステレスコープ冠(以下コーヌス)が開発され,半世紀以上が経過した.コーヌスを使った治療は,補綴前処置・補綴後処置も含めて幅広く対応でき,適応症は非常に多様で,補綴前処置や補綴後処置を一連の流れ・考え方の中で扱うことができない他の補綴法とは一線を画すものである.しかし日本では,コーヌスが,治療後の生涯にわたって予知が可能で,一定の考え方や処置方針のもとで咀嚼機能を維持できる包括一貫治療システムとして位置づけられることはほとんどなかったように思われる.本論文では,日本ではあまり議論されてこなかった,コーヌスの本質的な臨床的意義,価値などを再考した結果,コーヌスは補綴前処置・補綴処置・補綴後処置の全てにおいて具体的かつ実践的な包括一貫治療システムとして使うことができるとの結論に達したので,報告 する.