2018 年 38 巻 1-2 号 p. 44-51
欠損補綴治療に対して,インプラント治療を選択する機会が増えている.しかし,患者の希望や経済的背景などの障壁が多いこともあり,インプラント治療が行えない症例も多い.そこで,欠損に対しての一般的なアプローチとしては,ブリッジ補綴治療,可撤性義歯補綴治療,自家歯牙移植,放置が考えられるが,移植以外の治療法では他の残存歯に力の負担を強いる場合があり,さらなる欠損を招くことが考えられる.一方で自家歯牙移植を選択した場合,ドナー歯の状態にもよるが,欠損に対して隣在歯への維持を求めることなく,単独での欠損補綴処置を行 える可能性が高い.今回,6 の保存不可能な歯根破折に対して,上顎右側の埋伏智歯を同部に移植処置を行った. 理想的な治癒像は得られていないが,症例を通して処置の難しさ,適応の判断について考察した内容を報告する.【顎 咬合誌 38(1・2):44-51,2018】