日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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総説
咬合と咬合器の歴史 II
永田 和弘
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2020 年 40 巻 3 号 p. 181-

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抄録

Bonwill 咬合器からWalker 咬合器への発展は,普遍原理を目指す19 世紀科学観から個の特殊を追及する20 世 紀の科学観への転換を示すものだった.1920 年頃にHall 円錐説,Monson 球面説が出現したが,それらはかつての普遍原理を求めるものであり,彼らが提示した咬合器はBonwill が否定した単顆頭咬合器であった.Bonwill からWalker への発展の軌跡は,Gysi のWippunkt 咬合器,Adaptable 咬合器へと受け継げられていく.Gysi は,個の特殊に対応する分析手段として軸学説を提示したが,米国においては取り上げられることはなかった.Hanau の Model H 咬合器はGysi Adaptable 咬合器を駆逐し,米国の補綴臨床を半世紀にわたって支配した.McCollum は, フェイスボウを用いて,顎を自然にdrop open した場合に,わずかな開口であればhinge axis があることを見出し,咬合器上での咬合挙上に臨床的な解決の糸口を見出した.さらに,McCollumは側方運動を含む顎運動の探索を進め,咬合器Gnathoscope および顎運動描記装置Gnathograph を製作し,ナソロジー学派を誕生させた.戦後ナソロジーはStuart,Stallard,Thomas をはじめ多くのナソロジストにより半世紀に及ぶ旋風を引き起こしたが,いつの間にか人為的な最後退位を理想的下顎位とする咬合論へと変質してしまった.全調節性咬合器として知られる咬合器にも不備がある.個の特殊に対応する調節機構の原点に戻って,筆者の考案した全調節性咬合器をもとに,ナソロジーの再評価を試みた.【顎咬合誌 40(3):181-212,2020

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