2021 年 41 巻 1-2 号 p. 62-67
症例の概要:上顎前歯部の審美修復を行うに際し,左右で異なった補綴材料にて修復処置を行うことは良く経験するが,左右の色調を合わすことが困難なことも少なくない.今回,明度に焦点をあてた色調再現が可能なセメントを使用し,審美的な修復を行った症例を報告する.治療方針:患者は59 歳,女性,1 の硬質レジン前装冠脱離で来院した.患者に説明と同意を得た結果,1 は抜歯後インプラントを埋入しオールセラミッククラウン,1 はポーセレンラミネートベニアを装着することとした.治療経過:左右の歯頸線を合わせやすくするために1 の矯正的挺出を行った後,抜歯即時にてインプラントの埋入を行った.インプラントの骨結合を確認後,1 および1 の診断用ワックスアップから同部位のプロビジョナルレストレーションを作成し,フロアブルレジンテクニックを用いてポーセレンラミネートベニアの形成を行った.形成後にはチェアーサイドSEM 観察システムによりエナメル質の残存状態を確認し,歯科用レジンセメントにて接着した.考察と結論:診断用ワックスアップを付加的に製作することにより形成量を少なくすることが可能となるためエナメル質を多く残存でき,ポーセレンラミネートベニアの長期接着が期待できた.オールセラミッククラウンの色調は支台歯や接着材料の色調にも影響される.ポーセレンラミネートベニアは厚みがさらに薄くなることからセメント色の影響をより大きく受けることが考えられる.明度は色調に影響することから,明度で調整の可能なセメントが有用であると考える.今回使用したセメントは,明度の異なる3 色から選択するシンプルなシステムで簡便に色調を合わすことが可能であった.