損傷を受けた生活歯髄に対してRest treatment(安静下での経過観察)を行い,その経過を注意深く観察して治癒に至った症例,①慢性歯髄炎の歯髄保存療法24 年経過症例(初診時12 歳,男児),②咀嚼時疼痛に対するRest treatment(初診時33 歳,女性),③深在性う蝕で慢性歯髄炎が疑われた下顎大臼歯の歯髄保存療法(初診時23 歳, 男性)を示した.初期の歯髄炎に対する基本的治療は,生活歯髄の保存療法であるが,その条件となる歯髄診断は白か黒かを容易に判断できるものではない.これは歯髄組織が生活力の旺盛な可逆性の組織であるためである.このためRest treatment と慎重な経過観察が,損傷を受けた歯髄の初期治療であり,それにより保存の可否を判定するべきである.精密あるいは効率的な根管治療に注目が集まっているが,歯内療法の基本が歯髄の保存療法にあり,その前提としてRest treatment が重要であることに改めて注意を喚起したい.