日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
歯周基本治療のみで病的歯牙移動を改善した1 症例
日野 悦子川口 智橋本 雅人
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2024 年 43 巻 2 号 p. 114-

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抄録

【症例の概要】54 歳,女性.主訴;歯間が広がってきた.初診時所見;全顎的に中等度歯周炎を認め,特に2歯の骨欠損は著しく,病的歯牙移動(PTM:pathologic tooth migration)により歯間空隙を生じ,審美障害を訴えた.【治療方針・治療経過】患者は矯正治療を希望されたが,まずは歯周基本治療を行い,再評価にて矯正治療等の検討をすることとした.徹底した炎症のコントロールに努めたことで,矯正治療や外科・補綴処置をすることなくPTM を改善することができ,現在,術後約3 年経過している.【考察】歯周炎患者におけるPTM の割合は約33 ~55%とされ,審美障害を訴える場合も多い.原因は多因子によるものとされているが,炎症と力の問題が大きいと考えられる.そこで安易に矯正治療を行わず,徹底したOHI と適切なインスツルメーションとTCH に対する指導を行った.結果,矯正治療や外科・補綴処置を行うことなく,低侵襲な介入のみで PTM が改善され,SPT へ移行できたと考えられる.PTM は1カ所に限局して起こるわけではなく,個々の歯とそれを含めた 歯列全体に起きている.歯周治療を通じて,PTM が改善することで空隙の閉鎖のみでなく歯列の連続性回復や咬合の変化も認めた.【顎咬合誌 43(2):114-120,2024

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