日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
歯科恐怖症を有する患者に対しナラティブを重視して診療を進めた1 症例
菱川 梓
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2024 年 43 巻 2 号 p. 144-

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抄録

44 歳の女性の歯科恐怖症患者について,患者のナラティブを重視して診療を進め,歯周治療から安定したSPT に移行した 症例である.患者は,前歯が自然脱落しそうな状態にもかかわらず歯科治療に対する恐怖心から永年にわたって歯科受診を避けてきた.患者の訴えから歯に強い劣等感をもち,治療が必要だと自覚しながら歯科受診を避けてきた歯科恐怖症と判断した.初診時は極度の緊張状態にあり,自分から言葉を口に出すことはなく,恥ずかしさで話すのも苦しそうだったが,6 回の歯周基本治療のプロセスで,次第に緊張が解け,患者のアイコンタクト,自発的な会話,話す速さや声の大きさが徐々に変化した.それに伴ってプラークコントロールが顕著に改善するとともに,歯周外科への移行が可能になった.筆者は,ナラティブを重視した治療の進め方やノンバーバルなコミュニケーションの重要性とともに,患者を尊重する姿勢によって患者の信頼を得ることの重要性を教えられた.【顎咬合誌 43(2):144-150,2024

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