日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
Online ISSN : 1884-8230
Print ISSN : 1346-8111
ISSN-L : 1346-8111
原著
試適操作における水とトライインペーストの明度に与える効果
原 大輔山本 健蔵北田 直也長藤 明博信野 和也貞光 謙一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 44 巻 2 号 p. 155-159

詳細
抄録
本研究の目的は簡易的な試適材料として多用される水で補綴装置を試適した時の明度と,セメントシステムを適用時の明度を比較し,その明度関係を明らかにすることである.上顎左側切歯の審美的回復を主訴に来院された患者(女性)に対して,ラミネートベニアによる修復を選択した.ラミネートベニア(IPS e.max プレス MT BL3: Ivoclar Vivadent)を合着する前に,水および明度の異なる3 種(L-Value, M-Value, H-Value)のビューティーセムトライインペースト(松風)を用いて試適し,その明度を目視および測色計(SpectroShade, SpectoroShade USA)を用いて測定した.水を使って補綴装置を試適したところ,L * 値は70.9 であった.ビューティーセムトライインを用いて試適したときの明度は L-Value:72.3,M-Value:73.7,H-Value:74.0 であった.水とその他の材料間の色差Δ E*ab はL-Valeu:1.6,M-Value:3.0,H-Value:3.2 であった.観察者の 50% が認識できる色の違いである知覚閾値はΔ E*ab=1.80 に相当し,観察者の 50% が許容できる色の違いである許容閾値はE*ab=3.46 であるので,これらの閾値と比較すると水とL-Value の色差は知覚閾値内であり色の違いを認識することができない.一方,水とM-Value,H-Value は許容閾値内ではあるが,知覚閾値以上であるため色の違いを認識できる.隣在歯との比較においては,中切歯,犬歯ともにb* が高く相違しているが,ビューティーセムトライイン L-Value を用いて修復した歯のL* が近似している.隣在歯との色調が調和し,患者の希望に沿ったビューティーセムベニア L-Value を用いて装着した結果,患者は審美的修復に満足していただけた.本セメントシステムにおいては,水による試適と,L-Value での装着時の明度が近似するため,水の試適において隣在歯とのバランスが良好であれば,L-Value を選択するべきであると結論付けられた.
著者関連情報
© 2025 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top