本研究の目的は,色調ラインナップが3 種類の異なる明度から構成されるビューティセムベニアおよび,そのシステムのトライインペーストであるビューティセムトライインをレジンセメントの色調を決定する際に用いた場合のラミネートベニア審美修復への応用について評価することである.患者(女性)の中切歯のシリコーン印象を採取し,この印象から歯科充塡用コンポジットレジン(シェード:A1,A2,A3,A4)を用いてモデル支台歯を作製した.モデル支台歯に対してラミネートベニア(IPS e.max プレス, シェード:HT BLS)を作製し,明度が異なる3 種類の色調(L-Value, M-Value, H-Value)から構成されるトライインペースト(ビューティセムトライイン,松風)を用いて試適を行い,非接触型比色計であるDCCM-1(松風)を用いての測定(L*a*b*)を行った.L*a*b*値の中で明度を示すL* 値の測色結果について統計解析をすると,モデル支台歯の色調がA1 である場合は各色調のトライインペースト間で有意差が無かった.一方で,モデル支台歯の色調がA2,A3,A4 の場合はL-Value とM-Value 間での有意差は無いものの,L-Value およびM-Value に対して最も明度が高いH-Value は有意に高いL* 値を示した.また,全ての色調のモデル支台歯において,トライインペーストの明度が高くなるL-Value,M-Value,H-Value の順番にL* 値が高くなる傾向があった.3 種類のトライインペースト用いて,ラミネートベニアの試適を行ったところ,M-Value が最も隣在歯と色調の調和がとれていることが確認された.SpectroShade(SpectroShade USA)を用いて,試適を行った修復歯と隣在歯の歯面の測色を行ったところ,同等のL*a*b* 値を示すことが確認された.この結果を基に,レジンセメントのM-Value を用いてラミネートベニアの合着を行ったところ,審美的な修復を行うことができた.本研究の結果から,3 種類の異なる明度から構成されるレジンセメントおよびトライインペーストのシステムを使用することで審美修復が可能であることが示された.
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