日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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原著
下顎全部床義歯の吸着を目的とした印象法による全部床義歯についての多施設研究
義歯の維持安定と咬合の関連について
永田 一樹佐藤 勝史林 宏暁黒江 敏史二藤部 ゆみ神部 毅安達 隆帆吾妻 聡後藤 光成坂本 伸寬笹原 将則佐藤 崇文関野 愉
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2025 年 44 巻 2 号 p. 160-166

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抄録
上下全部床義歯装着者の満足度には顎間関係が大きく影響し,その顎間関係には下顎の解剖学的条件と義歯の維持安定が重要 であると言われている.下顎全部床義歯の製作に吸着印象法を用いることで,顎堤条件が悪い場合でも維持安定が得られ,上下 全部床義歯装着患者の口腔関連QOL が良好であったと報告されているが,咬合への影響は不明である.そこで本研究では,吸 着印象法により製作された下顎全部床義歯の維持安定と咬合の関連性を調査した.本研究は,一般開業歯科医院11 施設で行った. 義歯装着後1カ月以上を経過し,2021 年7 月から2022 年6 月までに義歯調整やメインテナンスに来院した66 名(平均77.2 歳 ± 10.9)の上下無歯顎患者を被験者とし,オーバーデンチャー及びシングルデンチャー装着者は除外した.評価項目として, 咬合スコアとKapur の維持安定スコアを用いた.咬合スコアの平均値は4.89 ± 4.54 点であった.下顎の顎堤状態が悪いほど 咬合スコアが高くなる傾向が見られた.維持安定スコアの平均値は上顎で4.77 ± 0.63,下顎で3.94 ± 1.38 であった.術者に よる義歯の維持の評価である維持安定スコアと患者報告型アウトカムである咬合スコアの結果から,下顎全部床義歯製作に吸着 印象法を用いることで,義歯の維持安定の向上だけでなく,咬合に関しても良好な結果となり患者のQOL 向上に寄与できる可 能性が示唆された.
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© 2025 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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