抄録
顎関節症は,日常生活を含む環境因子,行動因子,宿主因子,時間的因子といった複数の要因が複雑に関与し,それらが累積的に作用して個体の生理的耐性を超えた場合に発症すると考えられている.そのため,医療面接(病歴聴取),身体診察,ならびに各種検査結果に基づいて個々の患者における複数のリスク因子を的確に推定し,総合的に判断して正確に診断することが極めて重要である.顎関節症の治療においては,まず患者さんに病態の説明と疾患教育を行い,治療者側が提供する治療のみならず患者自身による悪習癖の修正や生活指導を含むセルフケアの重要性について理解を促す必要がある.顎関節症は,その病態がある程度まで進行した後,徐々に自然寛解していく傾向を示す比較的経過良好な疾患である.このような特徴からも侵襲的かつ不可逆的な治療,たとえば咬合治療などは原則として行うべきではなく,初期治療には理学療法,薬物療法,アプライアンス療法を中心とした保存的かつ可逆的な治療を行うことが推奨されている.