抄録
臨床的計測法により, 咬頭の明確な日本人若年男女22名につき, 下顎歯列模型上の被計測点の上下的位置を計測した.上下的位置計測における計測者間誤差の平均は0.14mmであった.切歯点を原点とし, 左右下顎歯列上の側切歯切縁中点, 犬歯尖頭, ならびに第一および第二小臼歯, 第一および第二大臼歯の遠心および近心のそれぞれ頬側/舌側咬頭頂の上下的位置を計測した.各被計測点の上下的位置の左右歯列平均値を算出し, 標準偏差値の単純平均値を求めた.その結果を五島らの結果11) と比較したところ, 咬頭の明確な若年者のスピーの彎曲が咬耗のある成人のスピーの彎曲より急であることが示唆された.標準偏差値の単純平均値は誤差検定で得られた値の約10倍で, 標本間のばらつきが主であることが示唆された.上下的位置の計測値の平均値には左右歯列間に有意差 (p<0.05) は認められなかった.