日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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中心咬合位と咬頭嵌合位に差異を伴った下顎非対称症例の外科的矯正治療
義澤 裕二林 揚春
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2003 年 23 巻 3-4 号 p. 302-311

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抄録

咬頭嵌合位 (lntercuspal position, 以下, ICPと略す) 1, 2) と中心位 (顆頭位) における咬合位 (中心咬合位, Centric occlusion, 以下, COと略す) 1, 2) との差異が大きく, 下顎に非対称性があるケースなどで, 矯正治療単独では満足な治療結果が期待できない症例においては外科的矯正治療の必要性について, 患者に十分なインフォームドコンセントを確立する必要がある.特に今回のケースのように, COとICPの差異が大きい場合, パラファンクション (ブラキシズムやクレンチング) などの異常な外力が加わると顎関節窩に荷重負担が生じ, Temporomandibular joint disease (以下, TMDと略す) 発症の一因となる可能性が示唆されている3) .また, 下顎非対称があるケースにおいては片側性の顎関節内障および変形性関節症との関連性が示唆されており4, 5) , 患者に主訴以外の重要な問題点について指摘し, 認識させることは患者の将来的なQuality of life (以下, QOLと略す) を考えるとき, より質の高い医療を提供するためにも重要であると考えられる.
今回われわれは, 主訴は上下顎歯列の叢生, 右側臼歯部のバッカルクロスバイトであったが, 左側下顎頭においてCOとICPに垂直的な差異があり, このCO-ICPの不調和が外科処置前の矯正治療の間に徐々に前方にも変化したアングルII級1類, 下顎非対称の症例に対して咬合器, Condyle Position Indicator (以下, CPIと略す) データおよび顎関節のX線写真を用いてスムーズなインフォームドコンセントを確立し, 外科的矯正治療により, 形態, 機能の改善ばかりでなく, 患者の治療後の精神的な満足度 (以前より咀嚼しやすくなった・下顎の位置が安定した感じがする) においても良好な結果を得ることができたので報告する.

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