抄録
矯正治療において, 固定源は常に重要な問題である.顎外固定は効果的な加強固定ではあるが, 患者の高い協力性に頼らざるを得ないという欠点がある.
そこで, 補綴用のオッセオインテグレーションタイプのインプラントを固定源として利用する方法が試みられてきた.しかし, 既存の補綴用インプラントを利用した場合は, 埋入のスペース, 高価格, オッセオインテグレーションするまでの長い治癒待機期間が必要などの理由により, 矯正治療用として使用するには好ましくなかった.
M.I.A. (Micro Implant anchorage) は矯正用の固定源として, 埋入や除去の容易さ, 低価格, 即時負荷が可能なこと, 術者が必要に応じて好きな場所に埋入できることなどさまざまな利点がある.
この論文においてMIAを応用した矯正治療結果により, MIAは上顎前歯の後方移動の固定源となることがわかった.また, この治療方法は以下のような特徴も持つことがわかった.
1.患者の協力性に頼らない.
2.上顎臼歯の後方への移動が可能.
これらの結果よりMIAは矯正治療において良好な選択肢の1つとなりうることが示唆された.