日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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抜歯即時埋入を成功させるには―矯正的挺出の応用―
西野 耕治松田 哲吉宗 正雄養田 勝秀荒木 久生
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2008 年 28 巻 4 号 p. 180-186

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抄録

今日, インプラント治療は, 予知性のある欠損補綴治療として広く用いられている.抜歯即時埋入インプラントは抜歯窩の吸収や歯槽骨の崩壊および唇側歯肉や歯間乳頭の退縮を抑制し, さらに治療期間を短縮するうえで, 有効な治療法の1つである.その際, 上顎前歯部などの審美領域では歯肉縁の高さや量を保つために, インプラント予定歯の矯正的挺出や結合組織移植などの処置が必要となる.
症例は上顎左側側切歯の動揺を主訴として来院した51歳の女性である.初診時の口腔内診査およびX線検査で, 歯根中央部に内部吸収を疑うX線透過像を認めた.歯根吸収による動揺のため患歯は保存不可能と診断した.そこで, 根尖部歯槽骨の増生と軟組織の増大を目的として, 矯正的に挺出させのち, 抜歯即時埋入手術を計画した.
上顎左側側切歯を歯内療法処置後, パワーチューブを用いて挺出し, 抜歯と同時にインプラント埋入を行った.埋入時に唇側歯槽骨が裂開したため, 自家骨移植とGBR法を併用した.最終補綴の審美性および角化組織を増大させ機能改善を図るため, 二次手術時に, 結合組織移植を行った.そして, プロビジョナルレストレーションを用いて経過観察後, 最終補綴へと移行した.現在, 歯周組織・咬合ともに安定しており, 良好に経過している.

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