JACET中部支部紀要
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研究論文
リズムの復唱がL2プロソディーの発音向上にいかに影響するか
杉浦 香織堀 智子
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2020 年 18 巻 p. 33-54

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抄録
近年の第二(L2)言語発音習得・学習研究で、歌、ジェスチャー、手拍子などを伴うリズム学習が、成人英語学習者の「リズム」の発音や「発音評価」の向上に効果的であると報告されている。本研究では、言葉を伴わないリズム音そのものの復唱により、学習者がリズムとそれ以外の発音項目(発話速度、ピッチ幅)を向上させることができるかプライミング実験を用いて検討した。実験には20名の日本語を母語とする英語学習者(平均20歳; 英語習熟度上位群:CEFR B1・下位群:A1)が参加した。ベースライン期では、音声呈示された4音節の文を1回即時復唱してもらった。実験期では、リズム音の復唱に続いて、音声呈示された文を即時復唱してもらった。その際、リズム音と後続の文のリズム構造が一致する条件と不一致の条件があった。各文はそれぞれの条件で1回ずつ呈示された。主な結果は、参加者全体では、他の条件と比べて一致条件でリズム面の発音伸長が有意に大きく、さらにピッチ幅の発音向上も有意傾向がみられた。発話速度では、下位群の一致条件で伸長がより大きい傾向が確認された。以上の結果より、リズム構造が一致するリズム音を英文音声に先行して復唱することで、リズムだけでなくその他のプロソディー面の発音も向上させる暗示的学習の可能性が示唆された。
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© 2020 一般社団法人大学英語教育学会中部支部
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