抄録
日本の英語教育において、発音指導は長い間周縁的なものとして扱われてきた。しかし、英語とは異なる音韻体系を持つ日本人英語学習者にとって、知覚・認識しづらい音が語の認識に影響を与えていることもある(Yoneyama et al., 2017)。本研究では、Yoneyama et al. (2017)を基に、異音dark /l/を取り上げ、学習者が困難を抱えやすい音環境の特定と、リスニング指導への示唆を目的とした。具体的には、学習者がdark /l/の音をどの程度認識できるのか、dark /l/に先行する母音の調音位置(前舌・後舌)ごとに調べた。Dark/l/を認識できるかどうか調べるためにはdictation課題を、語を聞いて正しくその語の意味を認識できるかどうか調べるためには意味記述課題を用いた。ロジスティック混合効果モデルを用いて分析した結果、後舌母音の方が前舌母音条件よりもdark /l/の認識率が有意に下がり、dark /l/の音認識の成否と語の認識率間に関係が見られた。更に、dark /l/を認識できたとしても、類似音を含む語の数が多いと、語の意味を正しく認識できない場合もあるということが示唆された。この結果を踏まえ、リスニング指導の内容が検討された。