抄録
目的:地域保健活動における自己評価の中で中堅保健師が感じた自信のなさを明らかにすることを目的とした.研究方法:都道府県型保健所に勤務する精神障害者の個別援助活動から地域保健活動を展開した経験をもつ,実務経験6〜10年の保健師7名を対象に,半構造化面接を用いてデータ収集を行った.自信のなさを「実践に対する自己評価によって生じる,自己の判断や能力,技術,価値を確信・尊重することができない感情」とし,分析は質的帰納的に行った.結果:中堅保健師は,個別援助活動から,関係者との連携・ネットワークの構築,当事者組織の立ち上げ等の地域保健活動を展開していたが,その中でみられた自信のなさは,【保健医療福祉関係者と協働していくことへの悩みや不安】,【保健医療福祉関係者のネットワークを構築していくことへの困難さ】,【精神障害者の当事者組織を維持していくことへの困難さ】,【精神保健活動を地域で展開していくことへの緊張や不安】,【個別事例への支援を円滑にすすめていくことへの苦しさや不安】であった.考察:中堅保健師の自信のなさは,中堅期に期待されている能力や中堅保健師としてあるべき姿と,自己の判断や行動を対峙させ自問自答しているものと考えられた.また,中堅保健師の自信のなさは,より良い支援を熟考することで自己の判断や行動を自己評価し生じるものと考えられた.以上のことから,中堅保健師が自己の実践能力を適切に自己評価することや,上司や同僚の客観的な評価や承認が得られるようなサポート体制の重要性が示唆された.