抄録
目的:高齢夫婦のみ世帯で妻を介護する夫介護者を対象に,妻の「食事の支度」の自立度に焦点を当て,夫介護者による食事の支度の遂行に伴う困り事の有無とその内容について明らかにすることを目的とした.方法:東京都A区に居住する夫婦のみ世帯で介護保険の要介護度1〜5の認定を受けている妻を介護する夫介護者38名に対し,訪問面接調査を実施した.妻のIADL「食事の支度」の自立度によって対象者を2群に分類し(I群:妻が食事の支度を「できる」/II群:妻が食事の支度を「できない」),各群における食事の支度の遂行状況,食事の支度に関する困り事の有無や内容を比較した.結果:I群では食事の支度の遂行に関して,困り事は挙げられなかった.一方,II群のうち,夫が食事を作ることができないケースや食事を作ることに慣れていないケースで,食事づくりや食事の内容に関する困り事が挙げられた.これらのケースは,妻のIADLはすべて要介助であったが,ADLのうち食事や排泄,離床,室内歩行は自立していた.考察:妻の基本的なADLは自立しているが,食事の支度ができなくなった段階で,夫介護者の食事の支度に関する困り事が生じやすいことが示唆された.高齢夫婦のみ世帯の夫介護者に対しては,適切な食生活を維持し,家事や介護を円滑に遂行するための援助を早期に行う必要があると考えられる.