抄録
目的:糖尿病については予防への取り組みの必要性が主張されているが,同時にその予防活動の困難性も指摘されている.また糖尿病の可能性を否定できない人がその曖昧な状況の中でそのことについてどのように認知し,どのように対処しようとしているのかについては明らかにされていない.したがって本研究では糖尿病の可能性を否定できない人の曖昧な状況への対処を明らかにすることを目的とした.方法:市町村が主催する平成17年度の健康診査にて糖尿病境界域と判定された40〜69歳の者で,糖尿病での医療受診のない者6名に半構成的インタビューガイドを用いてデータ収集し質的帰納的に分析を行った.結果:糖尿病の可能性を否定できない人の曖昧な状況への対処は【状況の捉え】と【取り組み】によって構成されていた.また,【状況の捉え】【取り組み】の内容が明らかになった.【状況の捉え】はその人が自分の状況をどのように受けとめているのかを表わしたものであり5つの大カテゴリーが含まれていた.【取り組み】はその人がおかれた状況の中で何らかの意図をもって実践していることであり,13の大カテゴリーが含まれていた.結論:糖尿病の可能性を否定できない人に対する看護実践には本人の主観に注目した関わり,健康診査結果の有効な活用と医療との連携,主体性を応援する関わり,個人の健康づくりから地域づくりへの発展,これらを目指す看護の展開が重要である.