抄録
目的:自主グループが形成され,継続するプロセスを,住民と保健師の相互関係から分析し,保健師の支援のあり方を考察することを目的とした.方法:対象は65歳以上の一般高齢者向きの,保健所の筋力トレーニング教室の参加者が立ち上げた自主グループとした.データ収集は(1)事業記録,(2)参与観察,(3)インタビューとし,得られたデータを「住民の視点」,「保健師の視点」に整理した.分析には複線径路・等至性モデル(TEM)を用いた.結果:プロセスは4期に整理され,住民と保健師の相互関係で重要な場面であるOPP(必須通過点)は,第1期,第3期の2場面であった.第1期では,筋力トレーニング教室修了後も運動を続けたいという参加者のニーズを把握した保健師が,グループワークを設定し,グループでニーズを共有できる場を設定していた(OPP1).第2期では,保健師がサポートを申し出たことにより,グループ活動経験がある参加者が興味をもち,自主グループをつくることが決定された.第3期では,世話役の参加者から相談を受けた保健師が,自主グループで話し合う場を設定し,参加者どうしで世話役の交代について取り決めをした(OPP2).第4期では参加者はグループの課題について積極的に話し合うようになっており,保健師のサポートを必要としなかった.考察:保健師は住民との相互関係を保ちながら,足場づくりを行うファシリテーターとして機能していたことが見出された.