抄録
目的:治療中断のおそれのある精神障害者を医療につなげる際に用いられている保健師の技術を明らかにし,今後の支援のあり方について示唆を得ることを目的とした.方法:治療中断のおそれのある精神障害者を医療につなげた経験のある都道府県型保健所に勤務する保健師5人に,半構造化面接を用いてデータを収集する質的帰納的研究を行った.結果:分析対象とした4人の保健師のデータから,治療中断のおそれのある精神障害者を医療につなげる際の技術として,542個のコードを基に意味内容の類似性を考慮し,43個のサブカテゴリーと10個のカテゴリーを作成した.また,これらのカテゴリーを保健師による対象への個別支援の展開過程に着目して検討した結果,共通の段階が抽出された.すなわち,第1段階は『本人の病状を把握し,本人と家族への支援の必要性を探る段階』,第2段階は『本人の病状と支援の方向性について仮の見立てをする段階』,第3段階は『精神科医の見立てに基づき,本人が医療を受けられるように下準備する段階』,第4段階は『家族と本人が一緒に受診できるように後押しする段階』であった.結論:保健師は,精神障害者の病状や生活能力を見立て,将来彼らが地域で安定して生活できるようになることを目指して支援する重要性が示唆された.