2012 年 15 巻 1 号 p. 71-78
本研究は,建築技術者が抱えている仕事の過重性(量や質)の負担と精神健康との関連を明らかにすることを目的とした.また,仕事の過重性の負担と仕事のストレス,社会的支援,オーバーコミットメントとの関連についても併せて検討した.2010年8月,A建築設計会社206人に無記名自記式質問紙調査を実施した.建築技術者のうち,仕事の過重性(量や質)の負担がある者を「有群」,いずれもない者を仕事の過重性の負担「無群」と定義した.最終分析対象は建築技術者117人で,有群は74人(63.3%),無群は43人(36.7%)であった.χ2検定で分析した結果,無群に比べて有群は,精神健康のなかでも身体的症状(p=.005),不安と不眠(<.001)に中等度以上の症状を抱える者の割合が高かった.また,職場の対人関係でのストレスを感じ(p=.025),仕事への過度の傾注傾向を示すオーバーコミットメントハイリスク者の割合が高い(p=.001)という特徴が明らかになった.仕事の過重性の負担がある者への支援としては,(1)身体的症状や不安と不眠のスクリーニング,(2)対人ストレスを軽減するような職場環境づくり,(3)仕事に過度に傾注する行動パターンの修正介入等が重要であると考える.