日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
15 巻, 1 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 板橋 裕子, 別所 遊子, 上野 まり
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在宅で配偶者の排便介護をする男性介護者に焦点を当てて,排便介護状況,介護サービス等の利用状況および負担感と肯定感の特徴を明らかにし,訪問看護師が夫介護者の排便介護を援助するための基礎的知見を得ることを目的とした.方法:A県内7市24か所の訪問看護ステーションを利用している障害老人の寝たきり度ランクB・Cの療養者の排便介護をしている配偶者229人を対象に,無記名自記式の質問紙調査を実施した.調査内容は,介護者・被介護者特性と排便状況とその介護状況および排便介護の負担感と肯定感であり,有効回答140を男女の2群に分けて統計的に分析した.結果:夫介護者は妻介護者よりも排便介護の負担感の「ヘルパーや訪問看護師等の介護サービス費用がかさむ」および肯定感の「互いの思いやりが強くなった」と「恩返しのつもりで排便介護をしている」が有意に高かったが,「福祉用具購入資金援助制度利用」は有意に低かった.夫介護者は妻介護者よりも排便介護状況で服薬の調節と食事の工夫をすることが有意に少なく,排便介護を「訪問看護師」や「ヘルパー」に代行してもらう割合が有意に高かった.結論:訪問看護師は,夫介護者が排便コントロールのための服薬判断や調理を負担なく適切に行っているか確認し,夫介護者の恩返しや思いやり等の肯定感を維持し高め,あるいは経済的負担感を軽減するための情報を提供し活用できるような支援が必要である.
  • 押栗 泰代, 河田 志帆, 金城 八津子, 畑下 博世
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:日本国内で現在開業する保健師の起業動機・起業準備・現在の活動を明らかにする.方法:WEB上で把握された開業保健師のうち同意のとれた9人を対象として,開業に至った動機や開業までの準備,現在の活動等について半構成的面接を実施し,起業動機・起業準備・現在の活動に焦点を当てて質的記述的に分析した.結果:起業に関連する19の中カテゴリー,8の大カテゴリーが抽出された.起業の動機は,【利用者に応じたサービスの提供ができない組織の現状】【自分の力が生かせる働き方】【保健師としての自分の使命】があり,開業までの準備は【経営のかじ取りを行う力の習得】【自分らしいサービス提供のための事業プランの策定】があった.開業後の現在は【継続的な新しい開業保健サービスの創発と拡大】【開業保健師のサービスから波及する健康増進】が明らかとなった.また,すべてに関連するものとして,【私を支えてくれる存在】が明らかとなった.結論:開業保健師の起業動機には,組織で働くジレンマがあり,保健師としての使命感がこれを後押しした.起業準備としては,経営能力を培うための自己研鑚に励みこれを開業後も継続している.開業後は,人々の声を直接拾い上げ,迅速かつ柔軟にサービスを提供している.これらから,開業保健師のサービスは,公共性の高い活動を行う組織の保健師と双方が補完することで,多様化する健康ニーズの対応への保健師の活動モデルとしての可能性が示唆された.
  • 舛田 ゆづり, 田髙 悦子, 臺 有桂
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域在住の高齢者の孤独感を評価するための尺度として国際的に標準化されているUCLA孤独感尺度の日本語版を開発し,その信頼性と妥当性を検証する.方法:研究対象は,A政令市B行政区において無作為抽出された65歳以上の住民1,000人である.研究方法は,無記名自記式質問紙調査(郵送法)であり,調査項目は,日本語版UCLA孤独感尺度,基本属性,抑うつ,ソーシャルネットワーク・ソーシャルサポート,主観的健康観ならびに客観的健康状態,地域関連指標とした.結果:回答者は,540人(54.0%),平均年齢は73.6±6.8歳男性225人(50.8%),女性218人(49.2%)であった.日本語版UCLA孤独感尺度は最小20.0〜最大78.0点であり,平均は,42.2±9.9点(男性44.0±9.1点,女性40.6±10.4点)で分布の正規性が認められた.Cronbachのα係数は0.92であり,尺度総点は,GDSの合計得点とは有意な正の相関を示し(r=0.52,p<0.01),さらに主観的健康観とは有意な負の相関(r=-0.26,p<0.001)をおのおの示した.結論:UCLA孤独感尺度の日本語版は,信頼性と妥当性を有した,わが国における高齢者の孤独感を評価するための尺度として有用である.
  • 糸井 和佳, 亀井 智子, 田髙 悦子, 梶井 文子, 山本 由子, 廣瀬 清人, 菊田 文夫
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域における高齢者と子どもの世代間交流プログラムの効果的な実践に向けて,文献レビューを通して世代間交流プログラム介入と期待される効果について検討した.方法:データベースは医中誌Web,国立情報学研究所論文情報ナビゲータ(CiNii),PubMed,CINAHL Plus with Full Text,PsychINFO,SocINDEX,Journal of intergenerational relationships誌を用いた.2001〜2010年に発表された26論文を対象に,アウトカムモデルを使用し分析した.結果:対象はおおむね60歳以上の高齢者と,子どもは幼稚園児から大学院生まで多様であり,子どもの年齢によりプログラムの違いがみられた.両世代に共通する効果は,(1)相互理解,(2)世代継承性の増加,(3)心理的well-beingの向上,(4)身体的well-beingの向上,(5)社会的well-beingの向上,(6)人間関係の広がり,(7)地域共生意識の向上,に整理された.結論:世代間交流プログラムはwell-beingの向上と地域づくりに有用な方法であることが示唆された.対象の年齢やニーズにより目的を明確化し,両世代に共通するアウトカムを中心においたプログラム開発ならびに理論に基づく方法論の確立が必要である.
  • 中山 かおり, 佐々木 明子, 田沼 寮子
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:就学前の発達障害をもつ子どもの親を対象とした育児支援プログラムの特徴と効果を明らかにする.方法:医学中央雑誌Ver.4.0とPubMedを用いて,1994年4月〜2010年3月に発表された文献を対象に検索を行った.結果:海外文献9件を分析対象とした.プログラム期間は8〜12週間であった.プログラムの目的は,親が子どもの行動管理の技術を身につけることであった.9件すべてで育児ストラテジーの説明をしており,その内容は子どものもつ発達障害の種類によって異なっていた.その他,自宅での育児ストラテジーの実践とフィードバックの提供,アセスメントに基づいた目標設定とモニタリングが行われていた.考察:発達障害をもつ子どもの親に対する育児支援プログラムには,対象となる子どもの発達障害の種類とその特徴を考慮し,使用する育児ストラテジーを選択する必要性が考えられた.さらに,親が育児ストラテジーを子どもの特徴や生活環境に応用できるよう支援するために,個別のアセスメントに基づく目標設定,自宅での育児ストラテジーの実践とフィードバックを取り入れる必要性が考えられた.
  • 丸尾 智実, 河野 あゆみ
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域住民を対象とした認知症の病気と認知症を予防する健康行動,認知症高齢者とその家族を地域で支えることの理解を含む認知症の理解促進プログラム(以下,プログラム)を実施してプログラムを評価する.方法:対象者は大阪府下2市6地区の50歳以上の地域住民で,全3回のプログラムにすべて参加した106人である.評価は対象者によるプログラム実施前後の質問紙調査で行い,評価内容は認知症のイメージと知識認知症の症状に対応する自己効力感認知症高齢者を自分の地域で支えることに対する考え方とした.結果:対象者の認知症のイメージは「認知症になるのは恥ずかしい」と「認知症になるのは悲しい」,「認知症は自分には関係ない」と「認知症は身近に感じられる」でプログラム後に有意に改善した.また,認知症の知識量はプログラム後に有意に増加した.認知症の症状に対応する自己効力感は「暴言や暴行をする認知症高齢者に対応できる」でプログラム後に有意に向上した.認知症高齢者を地域で支えることに対する考え方は「認知症高齢者とその家族を自分の地域で支えることができると思う」で実施後に得点が上昇した.考察:対象者の特徴等で結果の解釈に限界はあるが,本プログラムが地域住民の認知症の適切な理解を促し,認知症高齢者とその家族を地域で支える必要性について考えられる可能性が示唆された.
  • 本田 亜起子, 片平 伸子, 別所 遊子, 太田 貞司
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:経済的理由による介護保険サービス利用の手控えが高齢者やその家族の健康や生活に与える影響と,それに対する介護支援専門員(以下,CM)の対応を明らかにすることである.方法:神奈川県A市のCMを対象とし,自記式質問紙調査(1次調査)を行い,152人の回答について統計的に分析した.調査内容は,(1)対象者の基本属性,(2)経済的な問題がある利用者の把握,(3)介護保険サービスの手控えと影響およびCMの対応であった.さらに,1次調査の回答者のうち18人に半構成的面接調査(2次調査)を行い,質的帰納的に分析した.結果:1次調査:経済的理由から介護保険サービスを手控えている利用者を担当している者は71人(46.7%)であり,手控えによる影響には「本人の健康状態の悪化(52.1%)」「家族の介護負担の増加(47.9%)」等があった.2次調査:経済的理由には,「生活保護基準は超える低所得」「本人の意思」「親族の事情」等があった.CMの対応としては,「通常業務を超える活動」「他職種との調整・協力」「地域ネットワークの活用」等があった.結論:CMの約半数は経済的理由によるサービス利用の手控えが利用者の健康状態悪化や介護負担増加を引き起こした事例を経験していた.CMは手控えの影響を最小限にするために工夫していたが,保健福祉専門機関による支援体制の強化も求められる.
  • 石橋 寧子, 三木 明子
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,建築技術者が抱えている仕事の過重性(量や質)の負担と精神健康との関連を明らかにすることを目的とした.また,仕事の過重性の負担と仕事のストレス,社会的支援,オーバーコミットメントとの関連についても併せて検討した.2010年8月,A建築設計会社206人に無記名自記式質問紙調査を実施した.建築技術者のうち,仕事の過重性(量や質)の負担がある者を「有群」,いずれもない者を仕事の過重性の負担「無群」と定義した.最終分析対象は建築技術者117人で,有群は74人(63.3%),無群は43人(36.7%)であった.χ2検定で分析した結果,無群に比べて有群は,精神健康のなかでも身体的症状(p=.005),不安と不眠(<.001)に中等度以上の症状を抱える者の割合が高かった.また,職場の対人関係でのストレスを感じ(p=.025),仕事への過度の傾注傾向を示すオーバーコミットメントハイリスク者の割合が高い(p=.001)という特徴が明らかになった.仕事の過重性の負担がある者への支援としては,(1)身体的症状や不安と不眠のスクリーニング,(2)対人ストレスを軽減するような職場環境づくり,(3)仕事に過度に傾注する行動パターンの修正介入等が重要であると考える.
  • 今松 友紀, 佐藤 紀子, 宮﨑 美砂子
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 79-88
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:生活習慣病予防教室終了後,地域活動参加に至った生活習慣病ハイリスク者の健康・生活に対する意識の発展過程を明らかにし,その特徴を考察することにより,生活習慣病ハイリスク者の意識の発展を促す効果的な支援方法への示唆を得ることである.方法:自治体が実施する生活習慣病予防教室を終了したのち,地域活動へ参加し始めた地域住民を対象に,半構成的面接法によるインタビュー調査を実施し,その内容を質的帰納的に分析した.結果:15人の研究対象者から得られた生活習慣病ハイリスク者の健康・生活に対する意識の発展過程は,「第1期:無自覚期」「第2期:健康・生活の改善模索期」「第3期:周囲・地域の健康・生活に対する意識発展期」の3期からなっていた.第1期は【無認識・知識不足】【自分の生活の内省・改善の必要性の自覚】等のカテゴリー,第2期は【自分に合った改善方法の模索】【元の生活への名残惜しさとの葛藤】等のカテゴリー,第3期は【生活のコントロール感と人生への自信】【周囲の健康問題への関心】等のカテゴリーから構成されていた.考察:生活習慣病ハイリスク者の健康・生活に対する意識の発展過程は,改善の必要性の自覚を基盤とし,改善による身体的変化に対する喜びの実感を起点に周囲・地域の健康・生活に対する意識が出現するという特徴を有していた.
  • 大西 竜太, 深川 周平, 石間 のどか, 堰根 怜子, 平野 美千代, 佐伯 和子
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 89-98
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,新生児家庭訪問における信頼関係構築について,母親の反応に対する保健師の判断を通して明らかにすることを目的とした.方法:経験年数10年以上の保健師10人を対象に半構成的面接を行った.データは質的帰納的に分析し,保健師が認識する信頼関係構築として6カテゴリーを抽出した.結果:母親の反応から保健師が判断した信頼関係は,【母が保健師を客人として拒否せず受け入れる】段階(Stage 1)から始まり,コミュニケーションを通じ【母が保健師を身近な存在としてとらえる】段階(Stage 2),【母が保健師を専門職の支援者ととらえる】段階(Stage 3)へと進んだ.そして,育児方法を共に考え,育児について感情を共有し合うことで【母が保健師と感情を共有し合う】段階(Stage 4)へと発展し,さらに両者の関係が深まり【母が安心して自身の思いを表出する】段階(Stage 5)へと進んだ.最終的に保健師が判断した母との信頼関係は【母が保健師との支援関係を肯定的にとらえる】段階(Stage 6)へ発展していった.考察:母親の反応から保健師が判断した信頼関係は,"人と人"の一般的な関係を通じ,"サービス受給者と専門職"の関係を経て,"共同"の関係に発展していくと考えられた.そして,Stage 1を基盤にStage 2からStage 5の4つの段階がそれぞれを前後しながら質的に深まり進展していくことが示唆された.
  • 関根 綾希子, 村山 洋史, 田口 敦子, 有本 梓, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 99-108
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:農山村地域の中年期男性の食生活の特徴を婚姻状況別に把握し,更に非婚者に焦点を当て世帯構成と食事支度者別に比較し,支援への示唆を得る.方法:新潟県A市に居住する40〜64歳の男性6,452人を対象に無記名自記式質問紙調査を郵送で実施し,基本属性,健康関連要因,食生活要因(栄養養摂取を評価するバランススコア,食べ方等を評価する食生態スコア,食事支度者の有無等の食環境)をたずねた.結果:2,514票を有効回答とし(有効回答率39.0%),うち非婚者は376人(15.0%)であった.既婚者は非婚者に比してバランススコア,食生態スコアが有意に高かったが,両群ともに得点は低かった.非婚者を世帯構成と食事支度者で3群に分けたところ,「A群:同居世帯・食事支度は自分以外」は40歳代が多く,食事支度は母親・父親が多かった.「B群:同居世帯・食事支度は自分」はA群よりも年齢が高く,3割は家庭に要介護者がおり,自分で料理する頻度が高かった.「C群:単身世帯」は年齢が高く,治療中の病気が7割にあり,夕食に弁当や総菜を購入する割合が高く,A群に比べて食生態スコアが低かった.結論:農山村地域の中年男性の食生活は,婚姻状況にかかわらず働きかけが必要であった.非婚者では世帯構成,食事支度者別にみたとき,基本属性や家庭の状況,食生活を取り巻く環境に特徴があった.支援の際にはこれらの特徴を考慮することが重要である.
  • 川本 晃子, 田口 敦子, 桑原 雄樹, 松永 篤志, 岩﨑 りほ, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 109-118
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域包括支援センター保健師が,高齢者が介護保険サービスなどを利用しながら地域で暮らしていくために地域住民と協力して行った個別支援の内容を明らかにする.方法:地域包括支援センターに所属する経験年数2年以上の保健師9人に半構造化面接を行った.サービスを導入しながら,地域住民と協力して行った事例について語ってもらい,質的記述的に分析した.結果:地域包括支援センター保健師の支援内容に関するカテゴリーは,《高齢者の情報がはいってくるように広く地域住民とつながりをつくる》《相談や通報をきっかけに現状を把握し,支援の見通しを立てる》《近隣住民を巻き込んだ支援体制をつくる》《近隣住民の支える気持ちを引き出し,近隣住民の支援する力を高める》の4つであった.結論:地域包括支援センター保健師が地域住民と協力して行った個別支援の特徴は,高齢者の情報が地域包括支援センターにはいる仕組みづくりと,近隣住民が支援する力の強化であった.後者はコミュニティ・エンパワメントのプロセスと類似していた.
  • 岡田 尚美, 和泉 比佐子, 松原 三智子, 波川 京子
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:軽微な育児不安や孤立感をもつ母親を育児サークル(以下,サークル)へつなげるための保健師の支援を明らかにすることを目的とした.方法:保健師5人を研究参加者とし,サークルへつなげるための支援について半構造化面接を行った.分析は要約的内容分析を参考に行った.結果:母親をサークルへつなげるための支援には,母親への直接的な働きかけとサークルまたは代表者への働きかけがあることが明らかとなった.また,支援は時間経過に沿い5つの期が見いだされた.サークル紹介時は,【サークルがイメージできる具体的内容を伝える】【参加による利点を伝える】など,サークル紹介後から初参加までは【連絡をすることでかかわり続ける】【代表者に母親への配慮を依頼する】などであった.サークル初参加時は【代表者に直接紹介する】【同じ場にいて母親を見守る】など,初参加後から継続参加までは【初参加後の感想を聞く】【母親の情報を代表者と共有する】など,継続参加時は【健診などで継続的にかかわり母子の状況を確認する】【代表者とかかわり続ける】などであった.考察:母親をサークルへつなげる保健師の支援とは,母親の不安を軽減するために,具体的な情報提供による参加への動機づけ,信頼関係の確立を目指しながら主体性を尊重した見守り,母親の状況を継続的に確認しながら評価を行うことであった.
  • 松井 学洋, 小野 ツルコ, 菅野 夏子, 藤井 可苗
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 126-132
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:A大学では,看護提供モデル事業「まちの保健室」を毎月1回開催している.今回,来室した高年齢者の日常生活習慣と身体組成の特徴と関連を調べ,身体組成値を生活習慣の評価情報として来室者に提供する有用性について検討した.方法:対象は2009年6月〜2010年3月にまちの保健室に来室し,協力が得られた50人(68.0±6.1歳)である.個人背景,食事時間,外出頻度,外出時の歩行時間を調査票に記入してもらい,自動血圧計と体組成計にて上腕最高血圧・最低血圧,体脂肪率,骨量,脚部筋肉量を測定した.分析は食事時間を「不規則」「規則的」,外出頻度を「週3日以下」「週4日以上」,外出時の歩行時間を「15分未満」「15分以上」に分け,各群で身体組成を比較した.結果:対象者の51%に高血圧症,41%に脂質異常症の既往があった.食事時間は72%が規則的で,66%が週4日以上外出していた.また,76%が外出時15分以上歩行していた.食事時間が不規則な群で体脂肪率が高くなる傾向がみられ,週4日以上の外出と15分以上の歩行の両方を行っている群では有意に体脂肪率が低く,骨量が高かった.結論:食事・運動に関する生活習慣と身体組成に関連を認めた.体組成計を活用し,客観的な測定結果を来室者に提供することで,根拠に基づく自身の生活習慣の振り返りにつながると考えた.今後,継続的な身体組成の評価が,来室者の生活習慣に与える影響を調査する必要がある.
  • 笠井 真紀, 河原 加代子
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 133-143
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:禁煙支援を実践するための基礎資料を得るため,日本で実施されている禁煙支援についての実態を把握する.方法:(1)文献を禁煙支援が実施されている地域,事業所,医療機関,学校の4つの分野に選別し,1つひとつの具体的な実施内容を抽出した.(2)具体的な実施内容から,対象者を不特定多数として実施したものや,講演会および教室の開催,対象者を限定し個人を対象とした教育など,実施内容の特徴によっていくつかの種類に分けた.(3)分けられたものを禁煙支援の内容とし,地域事業所,医療機関,学校の分野別に表に整理した.結果:禁煙支援の内容は,『キャンペーン』『禁煙治療』『講演会および教室の開催』『個人を対象とした教育』『通信による支援』『測定および検査』『教育媒体の作成および配布』『教育媒体の展示および掲示』『薬剤処方』『職員や関係機関への研修』『環境の整備』に分かれた.各分野によって実施内容と対象についての特徴がみられ,地域においては,ほかの分野よりキャンペーンや講演会および教室の開催が多く,禁煙についての普及,啓発活動がされていた.喫煙を開始しないための子どもを対象とした支援は数少なかった.禁煙支援の評価項目として,禁煙の継続・非継続が最も多く用いられていた.結論:禁煙支援の対象,方法によっては関係機関との連携が不可欠であり,子どもを含めた喫煙・非喫煙にとらわれない社会全体への禁煙支援が必要であることが示唆された.
  • 豊島 泰子, 今村 桃子, 鷲尾 昌一, 彌永 和美
    原稿種別: 本文
    2012 年 15 巻 1 号 p. 144-149
    発行日: 2012/08/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:看護大学の学部教育における在宅看護論での感染予防教育の現状および在宅臨地実習時の学生の感染管理の実態を調査し,在宅看護論における感染予防教育について検討する.方法:2009年4月の時点で,日本看護系大学協議会加盟の182大学教育機関の在宅看護論の教育担当責任者を対象に,無記名のアンケート調査を行った.内容は在宅における感染予防教育の有無,時間数,教育内容,臨地実習における感染症予防対策と新型インフルエンザ対策であった.結果:182大学中69大学から回答が得られた(回収率37.9%).71.0%の大学が在宅における感染予防教育を行い,24.6%は在宅看護でそれを行っていた。在宅の感染予防教育の講義時間は2時間が最も多かった(28.6%).その教育内容は,「在宅感染予防対策(感染経路など)」24.6%,「在宅における感染症」21.7%等についてであった.臨地実習前に学生の感染症予防対策として教育される感染症は,75.4%の大学が「インフルエンザ」と最も多く,ついで「結核」「MRSA」「肝炎」「疥癬」「ノロウイルス・ロタウイルス」等であった.実習前には7割以上の大学で風疹,麻疹,水痘,インフルエンザのワクチン接種を勧告しており,ほとんど(97.1%)の大学で新型インフルエンザの対策が講じられていた.結論:インフルエンザを含む感染症教育は看護大学での在宅看護教育上重要な課題のひとつであると考えられた.
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