抄録
目的:大都市の一人暮らし男性高齢者の社会的孤立にかかわる課題について,高齢者の強み,弱みならびに地域性の観点から記述することである.方法:研究対象は大都市圏の市街地高層住宅地域及び市街地近郊田園地域の一人暮らし男性高齢者20人(Primary Informant;PI)および保健医療福祉専門家等14人(Key Informant;KI)である.研究デザインは質的帰納的研究であり,半構成的インタビューによりデータ収集,分析した.結果:PIの平均年齢は79.5歳,平均独居期間は8.4年,KIの平均実務経験は10.8年であった.分析の結果,大都市の一人暮らしの男性高齢者の社会的孤立にかかわる強みのテーマとして「自律性」,弱みのテーマとして「孤独感」,地域性のテーマとして「近隣との関係性と慣習」が抽出された.うち,「近隣との関係性と慣習」については,市街地高層住宅地域では<地縁・血縁は乏しく互いに適度の距離を保つ>等がみられたのに対し,市街地近郊田園地域では<地縁・血縁に基づく根強い関係をもつ>等の差異がみられた.結論:大都市の一人暮らし男性高齢者における社会的孤立の予防に向けては,高齢者個人の自律性,孤独感ならびに地域における近隣との関係性と慣習を勘案し,一人暮らし高齢者個人と近隣住民および地域が社会的孤立を予防できる力量を互いに高められるような地域づくりが必要である.