日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
離島漁村に暮らす住民のソーシャル・キャピタルの実態と保健活動の方向性
成田 太一小林 恵子齋藤 智子
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2015 年 18 巻 1 号 p. 82-92

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抄録

目的:漁村に暮らす住民のソーシャル・キャピタル(SC)の実態と属性等との関連を明らかにし,SCを活用した効果的な保健活動を検討していくための示唆を得る.方法:A県B市C地区在住の20歳以上の全住民449人を対象に留置法による質問紙調査を行った.調査項目は属性,主観的健康感,生活満足度,居住継続意思,SC.結果:回収数(率)は220(49.0%).SCの実態として,「友人・知人との付き合い」「親戚・親類との付き合い」は65〜74歳で有意に多く,「近所の付き合い」「地域の行事・活動への参加」は20〜39歳で有意に少なかった.SC指数の平均値は,「付き合い・交流」-0.025(±0.8)が最も高く,年代別にみると「信頼」「社会参加」の指数と「結合型SC指数」「総合指数」で20〜39歳の得点が有意に低かった.考察:2007年の全国調査と比較してC地区のSCはやや高く,相互に信頼・交流しながら生活している様子がうかがえた.一方,20〜39歳の結合型SCが他の世代に比べて低く,後期高齢者も橋渡し型SCが若年層に次いで低く,交流が地区内に限定されている可能性がある.離島漁村地域においては,地域のつながりの強さを生かしつつ,多世代交流や他地区住民との交流の推進など水平型のネットワークを促進していくことが住民のSCを高め主体的かつ継続的な健康づくりに寄与する可能性が示唆された.

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© 2015 一般社団法人 日本地域看護学会
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